「花降る午後」


友人の娘の結婚式に招待され、京都駅から新幹線で品川へ。品川にできた新しいホテルだったが、 ここのチャペルが凝っていた。

 建物の中央部分が、そっくり吹き抜けになっていて、空が見える。といっても、屋根がないと雨の日は使えないわけだから、見えないくらい上のほうにガラスの屋根があるのだろう。

 チャペルの回りは丸くガラス張り。ガラスの向こうには回廊が作ってあり、それがバージンロードになっているらしい。

 というのは、友人が極度の緊張から、ロボットのような足取りで、いや足取りだけでなく、その顔もロボットになっていたが、ウェディングドレスの娘を伴い現れ、それからゆっくりとその回廊を一周したので、バージンロードとわかったわけだけど。

 出席者は回りに置いてあるベンチに腰掛けている。早い者勝ちだったらしく、早くにホテルに着いていたが、チャペルに入るのが遅かった私たち夫婦は式の間中、立っていなければならないらしかった。

 子どもや若者が座っているのを横目で見る私の顔が意地悪さを増してきたのを気付いた主催者の一人が、「遠くから来た人に譲りなさい」と子どもたちを立たせた。彼の目は勿論「年寄りに席を譲れ」と言っていた。

 「いえ、いいんですよ、私たちは立っていても」と言いつつ、私はせっかく得た二人分の席を金輪際手放すものかと、素早く夫を座らせ、夫にくっついて、ドドォーとベンチになだれ込んだ。

 型どおりの宣誓や賛美歌で、結婚式は順調に進んだ。これから新郎新婦が退場という時になって、なんと天から花びらが降ってきた。

 皆、あっというように上を見た。どこから花を降らしているのか知りたくて目を凝らしたが、天から降ってきているとしか思えないように、後から後から花びらが落ちてくる。

 宮本輝の小説に「花の降る午後」というのがあったが、私は思わず「花降る午後だわ」とつぶやいた。

 傍観者の私が、感動したくらいだから、当の若い二人は、どんなに幸せだったろう。神が人間に与え給う幸福が、誰の上にも平等に同じ量だけ降り注ぐものなら、この二人は、この瞬間に、その決まった幸福の量の半分を使ってしまったのではないだろうか、そして、これから先の長い人生、飽きるほど長い結婚生活を、あとの半分の量を小出しにしながら生きていかねばならないのかと思って、私はしんみりしてしまった。

                      2008.2.28 記