無くし物

 

 失くし物をする。あちこち引っ掻き回す。疲れ果てた時、いつも決まって思い出す話。子供の頃本屋が届けてくれていた雑誌「少女ブック」かなんかの付録の漫画だったと思う。おばあちゃんが孫に教える。「物を失くした時には、目を閉じて、その場で三回まわりなさい。そして、目を開けてごらん。ほら、探し物が、お前の目の前にあるじゃないか。」漫画の中では、きっとその通りになったのだろう。私は、自分で、そのおまじないを試してみたが無駄だった。漫画だもの、そんなことあるはずないと子供心に思った。ところが、何十年経った今、漫画の中のおばあちゃんの言葉がわかるようになった。探しあぐねた折、私は目を閉じてゆっくりと、自分の体を三回まわす。あんなに探して見つからなかった物がそこにある。それでも見つからない物は、私にとって必要でない物。そう思えばいい。命懸けで探さねばならない物など、この世にそう多くはあるまい。